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OneICUデータベースを活用した論文が国際学術誌 Critical Care に掲載
弊社が構築・運営する多施設ICUデータベース「OneICU」を活用した研究論文が、集中治療領域のトップジャーナルである Critical Care に掲載されました。
論文タイトル: Association between initial norepinephrine dose and minute by minute mean arterial pressure
掲載誌: Critical Care
論文リンク: https://ccforum.biomedcentral.com/article/10.1186/s13054-026-05920-2
研究の概要
ノルアドレナリン(ノルエピネフリン)はショック患者に対する第一選択の昇圧薬として広く使用されていますが、投与開始後の平均動脈圧(MAP)の上昇の大きさやタイミングについては、これまで十分に明らかにされていませんでした。
本研究では、OneICUに収録されている日本国内7施設のICUデータを用い、ノルアドレナリン投与開始後のMAPの変化を1分単位で詳細に解析しました。81,829名のICU患者のうち、低血圧(MAP ≤ 65 mmHg)を呈しノルアドレナリン投与を開始した5,349名を対象とし、一般化加法モデルにより用量ごとのMAP変化を定量的に評価しています。
主な知見
- 用量と昇圧効果の関係を定量化: ノルアドレナリンの初期投与量が高いほど、MAPの上昇幅が大きく、昇圧速度も速いことが示されました。0.100 µg/kg/min の投与速度では、0.025 や 0.050 µg/kg/min と比較して、最大MAP上昇幅および15分間の上昇速度がいずれも有意に高い結果でした。
- 低用量投与の限界: 0.025 および 0.050 µg/kg/min の投与速度では、ベースラインMAPがそれぞれ 53.9 mmHg、48.4 mmHg を下回る場合、60分以内にMAP ≥ 65 mmHg を達成できないことがモデルにより示されました。
- 目標MAP未達と死亡率の関連: 60分以内にMAP ≥ 65 mmHg を達成できなかった場合、ICU死亡率が有意に高いことが明らかになりました(オッズ比: 1.49 [1.27–1.76])。
- 敗血症と非敗血症での反応の違い: 敗血症患者では、0.025 µg/kg/min 投与時のMAP上昇の初期傾きが非敗血症患者と比較して有意に小さく、敗血症患者においては低用量でノルアドレナリンを開始することは好ましくない可能性が示されました。
OneICUの強みを活かした新規性の高い研究
本研究の大きな特長は、OneICUの1分単位のバイタルサインデータを活用することで、ノルアドレナリン投与後のMAPの経時変化を極めて高い時間分解能で捉えた点にあります。従来の研究では数時間単位のデータに基づく解析が主流でしたが、本研究は分単位の詳細なデータを用いることで、用量ごとの昇圧効果の違いや、敗血症・非敗血症間での反応差を初めて定量的に明らかにしました。
この成果は、ショック患者に対するノルアドレナリンの初期投与量の最適化に向けた重要なエビデンスとなり、ICUにおける治療判断の精緻化に貢献することが期待されます。
弊社は今後も、OneICUデータベースの拡充と、それを活用した臨床研究の推進を通じて、集中治療の質の向上に貢献してまいります。